理学療法士、作業療法士の行政処分や懲戒処分について

理学療法士(PT)や作業療法士(OT)の方が刑事事件を起こしたり不正行為をしたりすると、「理学療法士」や「作業療法士」の名称を利用できなくなったり免許を取り消されたりする可能性があります。
交通事故や傷害事件などを起こして行政処分を受ける例が多いので、PTやOTとして勤務している方はくれぐれも問題行動を起こさないよう注意しましょう。

今回は理学療法士や作業療法士に適用される行政処分や病院における懲戒処分について解説します。

医道審査会にかかってしまった方や刑事事件になってしまった方はぜひ参考にしてみてください。

1.理学療法士や作業療法士に対する行政処分とは

理学療法士や作業療法士の方に適用される「行政処分」とは、行政庁(厚生労働省)が理学療法士や作業療法士にあるまじき行為を行った人に対してペナルティを課する制度です。
理学療法士や作業療法士が行政処分を受けると、一定期間理学療法士や作業療法士としての仕事ができなくなったり、場合によっては免許を取り消されてしまったりする可能性もあるので、処分を受けることのないようくれぐれも注意しなければなりません。

理学療法士や作業療法士に対する行政処分の種類は以下のとおりです。

1-1.厳重注意

問題行動を起こした理学療法士や作業療法士へ厳重に注意する行政指導です。仕事は従前とおり続けられます。

1-2.5年以内の名称の使用停止

理学療法士や作業療法士としての名称を利用できなくなる行政処分です。期間内には理学療法士や作業療法士としての活動ができないと考えましょう。
名称使用停止が適用される期間は、最大で5年となっています。5年を超える程度の悪質な行動があった場合、より重い免許取り消しとなります。

1-3.免許の取消し

理学療法士や作業療法士の起こした問題が重大な場合、免許を取り消されてしまいます。
再取得は可能ですが欠格期間もありますし、必ずしも免許を再交付してもらえるとは限りません。

理学療法士や作業療法士に対する行政処分については、理学療法士及び作業療法士法に規定されています。

(免許の取消し等)
第7条 理学療法士又は作業療法士が、第4条各号のいずれかに該当するに至つたときは、厚生労働大臣は、その免許を取り消し、又は期間を定めて理学療法士又は作業療法士の名称の使用の停止を命ずることができる。
第4条 次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。
  • 罰金以上の刑に処せられた者
  • 前号に該当する者を除くほか、理学療法士又は作業療法士の業務に関し犯罪又は不正の行為があつた者
  • 心身の障害により理学療法士又は作業療法士の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
  • 麻薬、大麻又はあへんの中毒者

1-4.注意が必要な行動

理学療法士や作業療法士の場合「罰金以上の刑罰」に処せられると行政処分を受ける可能性があるので注意が必要です。
罰金以上の刑罰とは、以下のものをさします。

  • 罰金
  • 禁錮
  • 懲役
  • 死刑

上記の刑罰が適用される犯罪の典型例として、以下のようなものがあります。

名誉毀損罪

ネット上などで他人の社会的評価を低下させる事実の摘示を行うと、名誉毀損が成立してしまいます。

交通事故

過失によって人身事故を起こすと過失運転致死傷罪が成立します。危険運転致死傷材の場合、行政処分を受ける可能性がより高くなるでしょう。

暴行、傷害

暴行や傷害事件を起こして行政処分を受ける理学療法士や作業療法士の方も多数います。

わいせつ事件、性犯罪

痴漢、盗撮、公然わいせつなどの性犯罪を犯した場合にも行政処分が適用される可能性があります。

窃盗、詐欺、横領など

万引きやひったくり、詐欺や横領などの財産犯でも罰金以上の刑罰が適用されます。

上記のような犯罪行為をしてしまった場合には、早い段階から刑事事件へ対応し、不起訴処分を獲得するなどの方法で刑罰を免れる努力をしましょう。

1-5.不起訴処分とは

不起訴処分とは、検察官が「起訴しない(刑事裁判を起こさない)」とする決定です。
刑事裁判にならないので刑罰は適用されません。逮捕や勾留をされても、不起訴処分になれば刑罰は適用されず行政処分を受けずに済む可能性が高くなります。

不起訴処分を獲得するには、刑事事件となった直後からの対応が重要です。たとえば暴行や性犯罪などの被害者のいる犯罪であれば、早期に示談をしなければなりません。ご自身で対応するのは難しいでしょうから、刑事事件に長けた弁護士へ相談しましょう。

2.理学療法士や作業療法士に対する処分の数や具体例

理学療法士や作業療法士に対する行政処分は、3月頃に発表されます。
処分される人数は例年2~4人程度となっています。

たとえば2021年には理学療法士と作業療法士1人ずつが処分の対象となりました。https://mf.jiho.jp/article/217282

2019年には理学療法士が2人、作業療法士が1人処分されました。
具体的な処分内容として、傷害で有罪が確定した理学療法士は「名称使用停止3か月」となり、無免許過失運転致傷と道路交通法違反で有罪が確定した理学療法士は「名称使用停止2か月」となりました。作業療法士については器物損壊罪により、「名称使用停止1か月」となっています。
https://www.cbnews.jp/news/entry/20190320163315

名称使用停止処分は最大5年ですが、上記を見るとわかるとおり、多くの場合には数か月程度の処分が適用されています。
数年以上の名称使用停止や免許取り消しとなるのは、より重大な犯罪を犯した場合といえるでしょう。

3.理学療法士や作業療法士への行政処分が決定される手順

理学療法士や作業療法士が問題行動を起こしたとき、どういった手順で行政処分が決まるのかご説明します。

医道審議会により審議される

理学療法士や作業療法士などの医療有資格者に対する行政処分において、重要な役割を果たすのが「医道審議会」です。
医道審議会とは、医師や看護師、薬剤師、助産師、理学療法士や作業療法士などの医療関係者へ行政処分を課するとき、審議を行って処分内容について厚生労働省へ意見を出す議会です。

処分庁である厚生労働省は医道審議会による意見によって大きな影響を受けるので、医道審議会での判断内容は当事者にとって極めて重要といえるでしょう。

医道審議会で審議対象となってしまったら、何らかの行政処分を受ける可能性が大きく高まります。できればその前に罰金以上の刑罰を回避するなどの何らかの対応をとるべきです。
万一医道審議会で審議が始まってしまったら、行政処分を避けるために早急に対応しましょう。ご自身で適切に立ち回るのは困難なケースが多いので、お早めに行政処分に詳しい弁護士へ相談すべきです。

4.病院内の懲戒処分について

理学療法士や作業療法士が刑事事件を起こしてしまったら、行政処分だけではなく「病院内の懲戒処分」にも注意すべきです。
病院内の懲戒処分とは、病院が問題行動をとった従業員に対してペナルティを与えることです。

従業員が就業規則に違反した場合、雇用者は懲戒処分を適用してペナルティを与えることができます。理学療法士や作業療法士も病院から雇用されている以上、刑事事件などの問題行動を起こすと雇用者である病院から懲戒処分をされる可能性があるのです。
懲戒処分としては、以下のようなものがあります。

戒告

本人に対し、厳重に注意する処分です。

減給

一定額の給与を差し引く処分です。ただし差し引ける金額には労働基準法により限度がもうけられています。

降格

役職を下げる処分です。

出勤停止

一定期間、出勤停止とします。その間の給料は支払われません。

諭旨解雇

懲戒解雇を前提として、従業員側の自主的な退職を促す処分です。懲戒解雇されると退職金が支給されないなどの不利益が及ぶ可能性があるので、その前に自主退職の機会を与えます。

懲戒解雇

もっとも思い懲戒処分で、雇用者が一方的に解雇するものです。

勤務先が国立病院や公立病院の場合には、民間病院の懲戒処分とは異なり「公務員に対する懲戒処分」が適用される可能性があります。公務員としての資格が失われる可能性もあるので、民間病院による懲戒処分よりインパクトが強くなるでしょう。

5.病院の懲戒処分と行政処分の違い

医道審議会や厚生労働省による行政処分と勤務先の病院における懲戒処分は、まったく異なるものです。
たとえば行政処分を受けて名称利用停止となったら、どこの病院でも理学療法士や作業療法士として仕事ができなくなります。免許を取り消されたら再取得するまで資格自体が失われてしまいます。
一方、病院で懲戒処分を受けた場合、その病院で不利益を受けるだけです。他の病院では働けるので、影響は小さいといえるでしょう。

公務員としての懲戒を受けた場合、国立病院や公立病院でははたらけない可能性がありますが、民間病院への就職は自由にできます。

いずれにせよ、理学療法士や作業療法士が問題行動を起こした場合には早めに不利益を小さくするための対応をとるべきです。

6.医療関係者のお悩みはご相談ください

理学療法士や作業療法士の方が刑事事件などの問題を起こしたら、行政処分や懲戒処分へ対応するため専門知識を持った弁護士によるサポートが必要といえます。
名古屋駅ヒラソル法律事務所では医療関係者への法的支援に力を入れており、有効なアドバイスやサポートを提供いたします。お困りの医療関係者の方がおられましたらお早めにご相談ください。

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