指定保険診療機関や保険医登録が取り消されるケースとは?
行政処分を回避する方法を弁護士が解説

医療機関を運営する際には,指定保険診療機関として保険診療を適用しているケースがほとんどでしょう。薬局も同様に保険薬局として指定を受けているでしょうし,医師は保険医,薬剤師は保険薬剤師の登録をしているものです。

しかしレセプトの不正請求などの不適切な行為をすると,地方厚生局によって個別指導や監査を受け,最終的に「取消処分」をされてしまうリスクが発生します。

医師や薬剤師などの医療関係者が保険医や保険薬剤師の取消処分を受けると,医道審議会で審議にかけられて,医師資格や薬剤師資格を失ってしまう可能性もあります。

不利益を回避するため,地方厚生局による個別指導や監査を受けることになったら,早期に弁護士へ依頼しましょう。専門知識を持った弁護士であれば適正に対処できるので,取消をはじめとする行政処分を避けやすくなります。

今回は保険診療を行っている医療機関や薬局,医師,薬剤師などの医療関係者が必ず知っておくべき行政処分の基本的な仕組み,対象になりやすいケースについて解説します。

病院経営者,事務局や経理担当の方,勤務医,開業医や薬剤師などの医療関係者の方は,ぜひ参考にしてみてください。

1.保険診療機関の指定や保険医の登録が取り消される行政処分とは

病院を経営している場合,「保険診療機関」として指定されなければ保険診療ができません。
薬局なら「保険薬局」としての指定を受ける必要があり,医師の方は保険医,薬剤師の方は保険薬剤師としての登録を行う必要があります。

ただし不正行為をすると,保険診療機関や保険医などの指定や登録が取り消される可能性があります。指定や登録を取り消されると保険診療ができなくなってしまい,経営や医療職の継続が困難となるでしょう。このような,保険機関指定や登録の取消処分をはじめとしたペナルティの手続きは「行政処分」の一種です。

1-1.取消処分を決定する機関と手続き

取消処分を行うかどうかを決定するのは,「地方厚生局」です。
地方厚生局は,不正などの問題があると考えられるクリニックや医師などへ「指導」や「監査」を行い,重大な問題が明らかになると指定や登録を取り消します。
病院や医師などが個別指導や監査の対象になったらくれぐれもおざなりにせず,適切な対処方法を知って実行しなければなりません。

1-2.個別指導とは

個別指導とは,不正や著しい不当行為などの問題があると考えられる医療機関や医師などに対し,地方厚生局が個別的に調査を行う手続きです。直近6か月のレセプトのうち連続した2か月分を確認し,指導医療官が「内容に問題がないか」チェックします。
個別指導の結果,明らかに問題行為をしていることが発覚すると,取消処分をはじめとする行政処分が下される可能性があります。

1-3.監査とは

監査は保険診療や診療報酬の請求に対して不正があると考えられる場合において,行政処分を前提として行われる手続きです。個別指導と異なり,「当初から行政処分を前提としている」ので処分を受ける可能性が濃厚です。

なお個別指導や監査の手続きについてはこちらの記事に詳しく説明していますので,ご参照ください

2.行政処分の種類

保険診療機関や保険医などに対する主な行政処分をみてみましょう。

2-1.戒告

厳重注意される処分です。保険診療機関としての指定や保険医の登録が取り消されるわけではありません。保険を使った診療は継続できます。

2-2.取消処分

保険診療機関や保険医などの指定や登録を取り消される処分です。いったん取り消されると保険を適用した診療をできなくなってしまいます。

個別指導や監査の対象となったときには,「取消処分」を避ける必要があります。

3.取消処分の対象になりやすいケース

保険診療機関の指定や保険医登録などが取り消される可能性が高いのはどういったケースなのか,みてみましょう。

3-1.個別指導の対象になりやすいケース

個別指導については以下のようなケースで行われるケースが多数となっています。

レセプト一件あたりの点数が高い

レセプト一件あたりの点数が高い状態が続くと,個別指導を受けるリスクが高まります。
保険診療では,基本的に各都道府県の類型区別ごとに各科別の平均点数が把握されています。おおむね平均点の1.2倍を超えていないかレセプトを再点検され,該当すると「集団的個別指導」の対象になる可能性が高くなるのです。
いったん集団的個別指導の対象になると,翌年以降に再度高額なレセプトを請求し続けたときに「通常の個別指導」の対象になってしまうリスクが大きく高まります。
通常の個別指導を受けると,取消処分が適用される可能性があります。

指定保険診療機関では,「高得点保険医療機関」にならないように,レセプト請求の際に日頃から十分注意しましょう。

第三者からの情報提供

診療報酬に関して不正や不当な行為をしていると,第三者が情報提供を行い,個別指導の対象になるケースもよくあります。多いのは「退職した元従業員」による報告です。
個別指導の対象になりたくなければ,やはり日頃から適正な方法で保険の点数を計算し,レセプト請求すべきでしょう。そうすれば辞めた従業員が通報しても,不正や不当な行為が見当たらないので行政処分の対象にはなりません。

3-2.監査の対象となるケース

監査の対象になるケースは以下のような場合です。

  • 診療内容に不正や著しい不当があったと疑うに足りる理由がある
  • 診療報酬の請求に不正や著しい不当があったと疑うに足りる理由がある
  • 度重なる個別指導によっても診療内容や診療報酬の請求方法が改善されない
  • 正当な理由なく個別指導を拒否した

個別指導に協力しなかっただけでも監査の対象になってしまうので,個別指導には真摯に対応すべきです。

3-3.問題になりやすい行為の例

具体的には以下のような行為をすると,個別指導や監査の対象となりやすい傾向があります。

  • 実際には診療していないのに診療報酬を請求した(架空請求)
  • 診療回数や内容,日数などを水増しして請求した(水増し請求)
  • 実際に行った診療を別のもっと点数の高い診療に振り替えて請求した(振替請求)
  • 1つの診療について,患者から自費で医療費を受け取りながら2重に保険でも請求をした(二重請求)
  • すでに請求した診療について,再度保険の請求をした(重複請求)
  • 無資格者に診療をさせるなどの違法行為
  • カルテの用紙が厚生労働省の指定様式に適合していない
  • レセプト作成のために用いられる実態のない「レセプト病名」をレセプトに記載した
  • 混合診療の禁止に違反した
  • レセプトとカルテの内容が一致していない

保険診療を行う際には,くれぐれも上記のような行為をしてはなりません。許される行為かどうか迷ったときには,自己判断すると危険なので弁護士までご相談ください。

4.保険医登録を取り消されると「医業停止」されるリスクが高くなる

保険医登録を取り消されたとしても,医師としての資格を失うわけではありません。薬剤師についても同様です。
医師資格や薬剤師資格について審議するのは医道審議会であり,保険医や保険薬剤師の登録に関する行政処分とは別の手続きだからです。

しかしいったん健康保険についての不正行為が発覚して保険医としての登録を取り消されると,そのままの流れで医師資格も取り消されるリスクが大きく高まります。

そもそも保険料の水増しや二重請求などの不正行為は違法です。医師や薬剤師にあるまじき違法行為なので,医道審議会でも重大に受け止められて当然といえるでしょう。
保険医や保険薬剤師の登録を取り消されたとなると,重大な不正を行ったととらえられてもやむを得ません。

保険医や保険薬剤師の登録取り消しが医師や薬剤師の資格の取消に直結するわけではありませんが,現実的には多くのケースで医師資格,薬剤師の資格の停止や取消処分につながると考えてください。

医師や薬剤師の方が地方厚生局の個別指導や監査の対象になったら,取消処分をさけるための対処が必須です。

5.行政処分を避けるには弁護士へ相談を

個別指導や監査の対象となっても,カルテに正しく記載して適正な方法で診療報酬請求をしていれば,処分の対象にはなりません。

ただ「保険医療機関及び保険医療養担当規則」などの行政に関するルールは非常にわかりにくく,一般の医師や薬剤師,歯科医師などの医療関係者には理解しにくいものも多いでしょう。故意ではなく,過失で間違った請求をしてしまうケースもみられます。

日頃から医療機関への行政指導や医療に関する法律に詳しい弁護士に相談しておけば,リスクを大きく軽減できます。
弁護士であれば,個別指導や監査に同行して意見を述べたり資料を提出したりして処分を軽くするためのサポートもできます。
手続きの透明性を確保して保険医や保険薬剤師としての立場を守るため,早めに弁護士へ対応を依頼しましょう。

5-1.行政処分に対応できる弁護士の選び方

行政処分への対応を依頼するときには,どの弁護士でも良いわけではありません。
医療問題に専門知識のある弁護士はまだまだ少ないのが現状です。医療機関や医師に対する行政処分につき,専門知識をもった弁護士を選びましょう。

名古屋駅ヒラソル法律事務所では,医療関係者への行政処分への対応に力を入れて取り組んでいます。個別指導や監査,医道審議会の審議対象となってしまった医療機関や医療関係者の方は,お早めにご相談ください。

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