医道審議会までの流れ

医師や歯科医師,看護師などの医療職の方が刑事事件を起こしたり悪質な不正行為をしたりすると「医道審議会」で審議されて厳しい行政処分をくだされる可能性があります。

ときには業務停止となったり免許を剥奪されたりするケースもあるので,行政処分を軽く考えてはなりません。

万が一事件を起こしてしまったとき,不利益をできるだけ小さくするにはどういった流れで医道審議会にかけられるのか,正しく理解しておく必要があります。

この記事では刑事事件を起こしてから発覚し,医道審議会にかけられるまでの一般的な流れや対策方法をお伝えします。

刑事事件を起こしたり不正行為をしたりしてしまった医師や看護師,薬剤師などの方は参考にしてみてください。

1.刑事事件を起こす

行政処分への流れは,医療職の方が刑事事件を起こすところから始まります。
よくあるのは以下のような犯罪です。

  • 交通事故や交通違反
  • 性犯罪
  • 横領
  • 診療報酬に関する不正行為
  • 暴行

特に交通違反や交通事故は,車を運転する人なら誰でも巻き込まれる可能性のあるものです。医療職の方が車を運転する際にはくれぐれも慎重になりましょう。
また医薬品の横領や保険に関する不正行為など,医療職の立場を利用した犯罪も厳しく処分される可能性が高いので,絶対にやってはいけません。

2.発覚する

事件が発覚します。
発覚のきっかけとしては以下のようなものが多数です。

2-1.被害者による報告

被害者が警察へ被害届を出したり刑事告訴したりするパターンです。

2-2.現行犯

痴漢や盗撮などの性犯罪の場合,現行犯で逮捕されるケースもよくあります。

2-3.第三者による報告

退職した従業員による通報など,第三者が保険診療報酬に関する不正行為を告発する事例もみられます。

3.捜査開始

事件が発覚すると,警察が捜査を開始します。

4.身柄事件の場合には逮捕,勾留される

捜査が行われる際,身柄事件と在宅事件の2種類があります。
身柄事件とは,被疑者の身柄を拘束した状態で捜査する事件です。
在宅事件とは,被疑者が在宅のまま捜査を進める事件です。在宅事件の場合,これまでと同じように生活や仕事ができるので,身柄事件よりも不利益が小さくなるでしょう。

基本的には逃亡や証拠隠滅のおそれがなければ在宅捜査が選択されます。
事件の内容や軽微で本人がしっかり反省していれば在宅にしてもらいやすくなります。
弁護士に対応を任せると,弁護士からも在宅捜査にするよう申し入れができて在宅捜査にしてもらいやすくなるものです。刑事事件になったら,早めに刑事弁護人を選任しましょう。

5.起訴か不起訴か決定される

捜査が完了すると,検察官が被疑者を起訴するか不起訴にするかを決定します。
身柄事件の場合,逮捕後起訴までの期間が最大23日間です。
在宅事件の場合には,期間制限はありません(ただし刑事時効は適用されます)。だいたい2~3か月程度で決定が出るでしょう。

起訴されると刑事裁判が始まりますが,不起訴になったら刑事裁判は行われません。
裁判にならなければ有罪判決も出ないので,処罰を受けず行政処分のリスクもなくなります。

医師や看護師などの医療職の方が刑事事件を起こしてしまったら,早めに不起訴を目指すための活動をすべきといえます。

略式起訴と公判請求について

刑事裁判には「略式手続き」と「通常の刑事裁判」の2種類があります。
略式手続きとは,100万円以下の罰金が適用されて本人が認めているケースにおいて選択される簡易な刑事手続きです。

検察官が打診してきたときに被疑者が略式手続きに同意すると,裁判は略式手続きで進みます。略式手続きでは公判廷での審理が開かれないので,被告人となっても裁判所へ行く必要はありません。

ただし略式手続きでも刑罰は下されますし,罰金以上の刑罰が下されると行政処分が適用されるリスクが発生します。

「略式で罰金を払っただけだから大丈夫だろう」などと軽く考えてはなりません。

また略式手続きを適用できるのは本人が認めている事案のみなので,否認するなら公判請求してもらう必要があります。

このように,検察官の処分決定には「刑事裁判」とはいっても複数あり,それぞれ対処方法が大きく異なってきます。
不明点がある場合,自己判断せずに弁護士へご相談ください。

6.刑事裁判が開始される

検察官が起訴を選択すると,刑事裁判が始まります。

6-1.略式手続の場合

略式手続きの場合,自宅宛に書面が届くので,罰金を納付すれば刑事手続は完了します。ただしその場合でも罰金前科がついて医療審議会にかけられる可能性があるので,注意しなければなりません。

6-2.公判請求された場合

公判請求された場合,被告人の立場となって刑事裁判の期日に裁判所へ出頭しなければなりません。刑事裁判の期日はだいたい月1回程度のペースで開かれます。その日は仕事を休まねばならないでしょう。
刑事裁判にかかる期間は認めていればだいたい2~3か月程度,否認事件の場合には判決まで1年以上かかるケースもあります。

7.有罪判決が下されて確定する

刑事裁判における審理が終結すると,裁判所が判決を下します。
被告人が罪を認める場合には基本的に有罪判決が下されます。
罪を認めない場合でも無罪判決が出るケースは少なく,多くの場合に有罪とされてしまいます。日本の刑事裁判では有罪率が99.9%を超えており,無罪の獲得は簡単ではありません。

有罪判決が出た後被告人も検察官側も控訴しなければ,判決が確定します。

8.厚生労働省が把握する

有罪判決が確定すると,その事実が厚生労働省へ通知され,厚労省の把握するところとなります。すると,都道府県から行政処分の対象予定者のもとへと書面が届き,報告書の提出を求められます。

9.報告書を提出する

都道府県から報告書提出の要請を受けたら,速やかに作成して提出しましょう。
報告内容によって処分内容が変わってくる可能性もあります。
また報告には期限がもうけられているので,放置してはなりません。

自分ではどういった記載をするのが効果的か判断するのが難しい場合,医療者への行政処分に詳しい弁護士へ相談しましょう。

10.本人からの聴取

都道府県へ報告書を提出すると,だいたいの処分の方向性が決まります。
免許取り消しの可能性があるかどうかでその後の手続が若干変化します。

10-1.免許取り消しの可能性がある場合

重大な事案で免許取り消しの可能性がある場合には「意見の聴取」が行われます。
意見の聴取とは,本人から意見を聞くための手続きです。

10-2.免許取り消しの可能性がない場合

刑事事件は起こしたけれども業務停止や名称利用停止までの処分であり免許取り消しまでの必要はない場合,本人から「弁明の聴取」を行います。

意見の聴取も弁明の聴取も,どちらも本人から詳しく話を聞くための手続きであり,さほど大きな違いはありません。
重要なのは,処分対象者側がしっかり弁明を行い,行政処分を少しでも軽くしてもらうよう対処することです。
行政側は本人にとって不利な材料をそろえているので,対象者側としては自分に有利になる資料や主張書面を用意しなければなりません。

自分ではどういった行動をとるべきか,どのような資料が有効となるのか判断するのが難しいでしょう。

弁護士であれば,事前に意見の聴取や弁明の聴取への対処方法についてアドバイスができます。事前の資料作りのサポートもできますし,当日は手続きに同行して弁護士としての意見を述べることも可能です。医療職への行政処分に慣れている弁護士に対応を任せると不利益を受けるリスクを減らせます。

行政処分の対象になり「意見の聴取」や「弁明の聴取」の連絡を受けたら,すぐにでもご相談ください。

11.医道審議会における審議

本人による弁明や意見が出揃ったら,医道審議会にて審議が開かれます。
ここで本人を戒告とすべきか業務停止とすべきか免許取消処分とすべきか判断されます。

12.不利益を小さくする方法

行政処分において不利益を小さくするには,上記の医道審議会への流れにおいて以下のように対応しましょう。

12-1.在宅事件を目指す

まずは刑事事件の捜査方法について,在宅捜査を目指すべきです。
身柄拘束されなければ通常とおり仕事もできて,日常生活を送れます。
一方,身柄事件になると病院へも報告せねばならず,問題が大きくなってしまうでしょう。

在宅捜査にしてもらうため,早めに刑事事件に力を入れている弁護士を刑事弁護人として選任し,弁護活動を開始しましょう。

12-2.不起訴処分を目指す

次に不起訴処分を目指すべきです。
不起訴になれば刑事裁判が始まらないので有罪判決を受ける可能性は0%となります。
刑事事件の被疑者となったら,すぐにでも弁護士へ相談しましょう。

12-3.報告書の作成,提出を弁護士に任せる

医道審議会へ至る過程で「報告書」を提出しなければなりません。的を射た内容とするには専門知識が必要です。
自分で対応するより弁護士に任せる方が有利になりやすいでしょう。
特に文章作成が得意でない方は,必ず弁護士に依頼してください。

12-4.意見の聴取や弁明の聴取を弁護士に依頼する

意見の聴取や弁明の聴取の手続も弁護士に任せましょう。
自分で対応するより効果的に資料を集めたり主張書面を作成できたりして,不利益を小さくできるものです。

名古屋駅ヒラソル法律事務所では,医療職の方への支援体制を固めています。お悩みの方がおられましたらお早めにご相談ください。

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